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2017年1月 7日 (土)

絣美術館 (かすりびじゅつかん)

伯耆国(ほうきのくに)をご存知ですか。

古代日本には大和と出雲(いずも)という強大な二つの国がありました。

伯耆(ほうき)・因幡(いなば)の国は出雲の影響を強く受け、神代の神話に出てくる国です。

出雲の国(今の島根県)のすぐ右隣りにあるのが 伯耆国(ほうきのくに)。その右側にあるのが因幡国。鳥取県はこの伯耆国と因幡国二カ国で出来ています。私の故郷 倉吉市は伯耆国の国府がある中心地でした。

 

伯耆国(ほうきのくに)の一宮(いちのみや)は倭文(しとり)神社で、倉吉駅から車で10分ほどの所にあります。

 

 倭文神社は、日本固有で古墳時代から織られていた最古の幻の織物の倭文織(しずおり)を織る集団、倭文部(しとりべ)が織物の神様を祀る神社です。

 倭文織は天の岩戸に隠れた天照大神を呼び戻す為に玉串に飾られるような高貴な布です。

その後渡来の最古の織物である羅織(らおり)も含めて 織物全体の神社となりました。

 

(日本固有の倭文織(しずおり)は鎌倉時代以前に消えており、文献のみで未だ一例の端布が古墳で発見されただけの貴重な織物ですが、これについては後日少しまとめてみたいと思います。)

 倭文神社は関東から九州まで存在しますが、全国の中で倭文神社が国の一の宮として存在するのは伯耆の国だけであり、更に、伯耆国の倭文神社は全国唯一の国幣小社ともなっており、神代の時代から多数の倭文部の民が居住して織物に励んでいたのでしょう。

 

 鳥取県中部の海側にある倭文神社は海運にも陸運にも恵まれた場所にあり、日本の一大勢力の出雲などへ出荷していたのでしょう。

その後も織物はこの地で連綿と続き、江戸時代後期から大正時代には倉吉は絣の産地となりました。

 

「絣」と聞くと皆さんは紺色に井桁や亀甲、矢絣、縞模様など 単純な柄の織物を思い浮かべられるでしょう。

 これらは平織りが多く、経糸だけで絣模様を織り出す経絣(たてがすり) 緯糸で模様を織り出す緯絣(よこがすり)、両方に使用した経緯絣(たてよこがすり)などが多く、一部綾織り、繻子織りもありますが、 倉吉絣では特に高度な手描きの絵のような絵絣(えがすり)を得意として、さらに高度な綾織り、浮き織など様々な組織織(そしきおり)の「風通織」など高度な絣が主体となり、高級商品として全国でも評判を呼びました。

 

絣美術館

 

Photo

 

絣美術館は倉吉駅から倭文神社方面へ向かい車で5分ほどの倉吉短大の校内にある日本唯一の絣の美術館です。

 

 絣美術館での写真撮影はOKでした。

(海外の美術館では写真撮影などオープンが当たり前ですが、日本の美術館の大部分は未だに撮影禁止。閉鎖的というか、文化を広めようという意識が低い。

こちら絣美術館ではオープンにされていてとてもアカデミックでした。日本中の美術館もこのように自由に写真など撮らせて個人の研究などの参考にできるようになってほしいと思います。文化意識を一般の人たちに広げることこそ大切です。

「芸術は心の栄養素」 これがなければ人間らしい生活はできません。)

(iPhoneで撮った倉吉絣の写真ですが、どれもガラスに反射して人物が映りこみ見づらくて済みません。)

 

 

 小さな美術館で、1Fは絣研修室 2Fが美術館となっています。

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2F 絣美術館へ

 

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一部インドのパトラやインドネシアのスンバなど海外の絣の陳列があります。

 

パトラ

 

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絣発祥の地と言われる

インド・グジャーラート州の 18世紀頃の作品

茜(あかね)を基調とした色鮮やかな経緯絣(たてよこがすり)

ハート型の模様を配し上下に人間と像があしらわれています。

 

こういう海外のものもありますが、その大部分は技巧の優れた倉吉絣の絵絣でした。

 

私は日本各地で様々な絣も見ていますが、これほど技巧的に凝った絣だけの展示はまだ見たことがありません。

 

 

 倉吉絣

 

織る前に、全体の絵柄を決め、その絵にそって経糸(たて糸)は15mほどの長さで9001200本機(はた)に掛け、

緯糸(よこ糸)は約38cm幅で織っていき、全長100mほどの長さになりますが、

この 一本の糸が、絵や柄になるように染まらない部分と染まった部分を分けて絞り染めの様に一つづつ結んで行くという大変な作業。

結び終わったら藍染します。

 結びが下手だと糸が滲み汚くなるので強く結びます。

この白と紺の柄に染め分けた経糸は115mほどのものを9001200本を機(はた)にかけるのですが、染めた部分の一本づつが線のように綺麗に並んで機に掛けられないと柄に凹凸ができてしまい、

更に織り進んで行くときに微妙な力加減で糸が緩んだり引っ張られると織り柄がかすれてきれいに出ません。

当然糸染めの織物ですから多少のズレが出て、かすれるから絣というのですが、上手なものはあまりかすれず、柄がぼけません。 倉吉の絣は精巧でかすれが少ないので、かすれた庶民の絣から見ると上品でおおらかさのない冷たい印象だと後の評論家に言われたそうです。

 

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  とても細やかで流れる絣 すばらしい

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 とても細かい繊細な桐花柄と右は大胆なストライプに雲が浮いている

まるで、無地の布に渋紙の型で二重に染めた染め物のようです。

 

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展示品はどれも素晴らしいものばかりでしたが、

更にこの「桐と幾何文」はすばらしい。

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  中央で切り替えて織っているように見えますが、実際はどちらにも同じ一本のヨコ糸が染め分けられて通っているのです。まったく違う柄になるように緯(よこ)糸を染めて、柄がずれないようにきちんと織り込んでこの花と幾何、左右全く違う柄が生まれている。

 

経糸だけで絣模様を織り出す経絣(たてがすり) 緯糸で模様を織り出す緯絣(よこがすり)、両方に使用した経緯絣(たてよこがすり)の手法を縦横に使っています。

左の桐は緯絣(よこがすり)

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 右の幾何学柄は経絣(たてがすり)と経緯絣(たてよこがすり)を用い、

 

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同じ段に配して織るほど大変なことはないのに、これを同じ段に配置して織り上げている。

更に、一般的な絣は紺と白ですが、この作品は草木で薄茶色に染めた糸で格子を作り柄を生かすという高度なセンスで作られています。

これが一台の機織り機で同時進行に織られていくのです。

手で織っていくうちに力加減で糸が微妙にずれて模様はもっとかすれてしまうはずなのに桐の柄は鮮明に出ていて、幾何柄の端も染め物の僅かなにじみ程度で、ほんの僅かしかぶれていない。

これがすべて手織りで手作業で行われているのです。

とても 感動しました。

 想像してみて下さい

染め物は布に思いの柄を手で描き込んだり、型で染めて作りますが、

絣はすべてが一本の糸から始まるのです。

まず織り上げる絵や柄を決め、長い糸を織り上げたときにきちんとその絵や柄になるように考え、ごく一部だけを結んで染めて、それをほどいて機織り機にかけて一本づつ決めた柄になるように織り進んでいくのです。

ご自分で この工程をどの様に作るか 思い巡らせてみてください。

海老と菱形文

これも織りで模様がきちんと出ていて素晴らしいですね。

 

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糸を染めるときの抜き型

これで印を付けて糸を縛っていきます。

 

 

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絣を織るための資料

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倉吉絣を織った人たちは決して作家などではなく普通の百姓家などの女性達。

少しでも良いものを、生活の為にも 少しでも売れるものを と、

他所よりも大変な手間をかけてでも良いものを作ろうと複雑な絵絣を夜なべして織っていったのです。

こうやってその織物技術は高度化してき、素晴らしい絣は高額で売買されたそうです。

夜は満足な明かりがない頃ですから無理を重ねて、目を悪くして織れなくなる人もいたそうです。

 

 

どの作品もとてもとても素晴らしく小さな美術館なのに数時間も滞在してしまいました。

 

皆さんも是非この絣美術館で素晴らしい倉吉絣を堪能して下さい。

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絣美術館 (鳥取短期大学 絣美術館)

 館長 吉田公之介 (染織作家)

 

682-8555 鳥取県倉吉市福庭854

0858-26-1811

10:0016:00  休日 土日祝日(大学の休日)

入館料 基本的に無料

http://www.cygnus.ac.jp/local/kasuri.html

倉吉絣の保存と集中展示を目的に、平成104月に鳥取短大に開館しました。

1階は絣研究室の工房、2階は展示室となっています。展示室には、明治から昭和初頭にかけて倉吉とその周辺で織られた絣や、外国の絣などが陳列してあります。

研究生・特別研究生も募集しています


 

倉吉絣

こちらも是非ご覧下さい。

https://ja.wikipedia.org/wiki/倉吉絣

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/絣

 

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