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2013年6月 4日 (火)

生田和孝氏の焼物

京都 手打ち蕎麦かね井で美味しいお蕎麦を頂いた後、次の目標は兵庫陶芸美術館です。
 兵庫陶芸美術館へ行く目的は
「戦後復興期の丹波の作家たち - 市野弘之・生田和孝・大上昇・市野信水」
というテーマ展です。
生田和孝氏の作品を見ることのできる機会はそれほど多くないので、是非拝見したかった。
今回の4/17〜21日の5日間の旅行のコースからすると最終日に丹波篠山のろあん松田で蕎麦を食べる計画なので、その時に行きたかったのですが、21日は月曜日で休館日なので、初日に迂回して兵庫陶芸美術館へ寄ることにしたのです。
 パンフレットに載っていた  海鼠釉鎬手大鉢(なまこゆうしのぎておおばち)です。
20130604_04754

地元で開催されたものだから、生田和孝氏の代表作が沢山出品されているものだと思ってとても楽しみにして館内に入っていきました。
しかし、なんと、生田作品は六点。
他の作家の作品も点数は少ない展示会で、
 わざわざ来たのに気が抜けてしまいました。
生田和孝氏のものは
○上記 海鼠釉鎬手大鉢(なまこゆうしのぎておおばち)と、
文部大臣賞を取った作品に似たやや小振りの糠釉鎬手大鉢(ぬかぐすりしのぎておおばち)
○鉄釉面取り壺
○面取り鶴首一輪挿し
○面取り筆筒
○糠秞鎬手土瓶+糠秞鎬手湯飲み受け皿のセット
この六点です。
今回の展示会良い作品ばかりでしたが、身近に似たものがあるので、感動は少なかったのですが、 この中で、私が特に気に入ったのは「面取り鶴首一輪挿し」です。
それは、下の写真に似て、ドッシリとした胴が上に向かいキュっと細く天に伸びていて、李朝の骨董の最高級品のようで本当にすばらしい作品でした。
 
20130605_04413

 この展示会では作品集や作品紹介など紙媒体が無く、とても無念でした。
多少粗い写真でもよいから、作品紹介の冊子ぐらいはあって欲しいと思います。
 どうしても資料にする写真が欲しかったので、生田氏の旧知の間ですと言って、館長を尋ねて、写真撮影をお願いしようとしたのですが、生憎館長は外出中ということで、叶いませんでした。
残念ですが、ここではパンフレットの一点だけで、その作品を紹介することは出来ません。
生田和孝氏は私の故郷 鳥取県倉吉市の隣町 東伯郡北栄町江北出身で、父の友人でした。
郷里へ帰られたときは度々私の父を訪ねてこられました。
何も連絡無くふいに来られることが多く、破天荒でいつも陽気に父と芸術の話などでお酒を飲まれていました。
私が子供の頃から、沢山の生田氏の皿や茶碗などを普段の食事などで毎日使っており、氏の陶器で育ったような感じです。
氏の陶器は暖かみのある陶器で、中には焼き加減などで少しゆがんだものなどもありましたが、どんな料理にも合わせやすく、どれもいい器ばかりでした。
 生田和孝氏は、生涯陶工だと言って人間国宝を断った名工 河井寛次郎の弟子で、その影響を強烈に受けた方です。
 京都の河井寛次郎の元で修行したあと丹波立杭に入り、芸術作品を目指すのではなく、「使ってたのしい製品」普段使いの雑器の完成度を重視され、もっぱら普段使いの雑器の仕事に専念した方でした。
作家という言い方を嫌がり、民の芸「民藝」を追求する最後の民藝家なのではないかと思います。
 生涯陶工だといっていた河井寛次郎の「民藝」という思想を一番受け継いでいたのが生田和孝ではなかろうか。
私は、子供の頃から生田さんの器で育ったものですから結婚した新居でも使いたいと、昭和50年に立杭の自宅にお邪魔しました。
到着すると「おおよく来た 入れ入れ」と にこやかに呼ばれ、まわりの方達に「倉吉のたすくさんの息子が来た」と紹介して頂きました。
 器を求めたのですが、生憎と製品がなくて、生田さんにリビングに連れて行かれ、使われている食器の中から好きな物を持っていけと、食器棚から直接取るようにいわれました。
豪放磊落、破天荒 まさか今使われている雑器を分けていただくとは思いませんでしたが、沢山分けていただきました。
 売る物ではないので、多少傷やゆがみなどもありましたが、これも生田さんの作品だとそれも絵になるのです。
 その時に偶然文部大臣賞受賞作の糠薬鎬手大鉢(ぬかぐすりしのぎておおばち)を見ることができました。
しろい大きな鎬(しのぎ)手の鉢で、そのしのぎの仕方を説明受けた記憶があります。
 とても楽しい思い出でした。
 生田和孝氏は面取りと鎬(しのぎ)の名人である。丹波の土を使い、釉薬は糠釉(ぬかゆう)や黒釉を中心に、日用雑器を作ってきました。
面取りと鎬(しのぎ)の説明をします。
面取り
器の表面をヘラ等でそぎ取って平らな面を作る技法
上からまっすぐ切り取る。その切れ味に面取りのよさがあるのだが、
生田さんの作品ほどすぱっと大胆にカット出来る作家のものはあまり見たことがない。
私も実際やってみたが、これが生田氏のようにはスパッと大胆にはカットできません。
私の持っている生田氏の面取りです。
糠薬面取壺
20130529_235235海鼠釉面取り筆筒
20130529_234802
 鉄釉面取湯飲
20130529_232251
これは本当に毎日お茶を飲むときに使っていました。
大胆な面取りが指の関節に旨くはまり、自然にグリップして安定する。
薄い器だと熱が直接皮膚に来ますが、その肉厚さで熱い湯でも柔らかく伝わります。
 私の手元には最初、10個くらいあったのですが、三十年もの間に今は2個だけになっています。
 子供の頃実家でも使っていたので、それを含むと、この湯飲みは50年もの間私のお茶を楽しませてくれていたのです。
 
鉄釉面取コーヒーカップ
20130529_232233
鎬(しのぎ)
鎬とは激しく戦うときに使われる「しのぎを削る」という言葉の鎬で、
刀の刃と峰の間で稜線を高くしたところのことですが、
陶芸では、器の表面をヘラなどでえぐるように削り、境目の稜線を際立たせる技法です。
生田さんのつくる「しのぎ」は本当に細かく繊細に しのいである。
 
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私の持っているものの中から 
海鼠釉鎬手筆筒
20130529_232144
海鼠釉コーヒーカップ
20130529_232409
 

  糠釉鎬手大鉢(ぬかぐすりしのぎておおばち)です。

20130529_220238

製品のサイズ直径約55.5cm、高さ約11.5cm
兵庫陶芸美術館に出品されていた物の釉薬違いのものです。
 
展示されていた海鼠釉をもう一度見ましょう。
20130604_04754
糠釉の方が鎬の美しさが際立ちますね。
 
鎬を拡大してみます。
20130529_220318
どれだけ手間をかけているか分からない位繊細な削り方。
これ一枚でどれだけの日数がかかっただろう。
何日も曲線を生かしながら削っていったことだろう。
20130604_05437
 写真は文部大臣賞を取った糠釉鎬手大鉢とその紹介記事です。
釉薬は私の物と同じ糠釉(ぬかぐすり)ですが、鎬(しのぎ)がまっすぐ中心に向かっており、私の物は斜めに弧を描きながら中心へ向かっています。

 

これほどの大作、どれだけ手間をかけているかわからないほどみごとな製品です。
生田さんの家で拝見したとき、その大胆さと緻密さにとても驚きました。
それでは生田和孝製品をそれ以外も一緒にどうぞ
 
20130530_03041海鼠釉コーヒーカップ
20130529_234419
 鉄釉掛け流し扁壺
20130529_231814
 どれもあったかいいい陶器でしょう。ほかにもお皿など沢山ありますが、これらの中で育つことのできた私は幸せ者ですね。
もっと長く存命であればとつくづく思います。
 
今日、また新しい生田さんの焼物が手に入りました。
ネットで生田作品を探していたら大阪の画廊がヒットして、メールを送り、そこで分けていただいた品です。
今日到着しました。
 あの50年以上もお世話になった湯飲みのお友達です。
 
20130605_191638
どうですか、面取りがビシッと決まっていますね。
手持ちの湯飲みと一緒に並べると本当によく合います。
 
20130605_191712
尚、糠薬鎬手大鉢と鉄釉掛け流し扁壺も探し求めて最近ようやく手に入れたものです。
本当に普段使うために作られた素晴らしいやきものです。
「普段使い」に真剣に取り組んだ生田さんに感謝です。
 
 
生田和孝 略歴
1927年(昭和2年)~1982年(昭和57年)
1927(昭和2年)
鳥取県北条町に農業を営む貢・勝野の次男に生まれる
1947(昭和22年)
堀尾幹雄の勧めで陶業に入る。藤平窯(五条坂)で河井武一の指導を受ける。
1951(昭和26年)
河井寛次郎のもとに移り、河井寛次郎の助手を勤める。
1956(昭和31年)
愛媛県砥部を経て、丹波立杭の市野兄弟社に入る。
1960(昭和34年)
独立し丹波釜屋に登窯を築く。
1975(昭和50年)
第二回 日本陶芸展で文部大臣賞受賞 作品は日本民芸館に所蔵
  日本民芸館展奨励賞、他
1982(昭和57年)
55才で永眠
 
鳥取県東伯郡北栄町 北条歴史資料館に常設展示室があります。
生田和孝氏のお弟子さん

■ 浦富焼 山下硯夫氏

■ 福光焼 河本賢治氏

■ 延興寺焼 山下清志氏

■ 柴田焼  柴田雅章氏

■ 俊彦焼  清水俊彦氏

     等の方達が活躍しておられます。

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